
クルマはかつての機械の集合体から、ソフトウェアによって定義されるマシンへと進化し、その過程で複雑性が増してきました。かつてはレンチを使っていた作業は、今ではアルゴリズムと高度な通信フレームワークが不可欠です。
ハードウェア主導からSDV(ソフトウェア定義型車両)へと変革する中で、AUTOSARとAndroidという 2つの異なるプラットフォームが融合し、自動車のイノベーションの新たな可能性が見えてきました。それは、次世代のデジタルコックピットと、シームレスな車載インフォテインメント(IVI)、そして将来のニーズに適応可能な高度なソフトウェアシステムの基盤を築くということです。

AUTOSARとAndroid
まず、それぞれが現代の車両エコシステムにどのように貢献しているかを見てみましょう。
焦点は異なるものの、両者の統合はSDV開発に不可欠であることが証明されています。この統合により、安全性が求められる車両システムと最先端のユーザーエクスペリエンスが結びつき、革新性と信頼性がシームレスに融合するのです。
AUTOSARとは?
AUTOSAR(AUTomotive Open System Architecture) は、安全性が求められるシステムの標準を定めるプラットフォームです。リアルタイム性能と標準化されたアーキテクチャを前提に設計されており、ブレーキ、エンジン制御、ADASなど、車両に不可欠な機能の信頼性と拡張性を保証します。
Android Automotive OSとは?
一方、Android Automotive OSは車内エクスペリエンスを支えるプラットフォームです。豊富なユーザーインターフェース、アプリエコシステム、OTA(Over-the-Air)アップデート機能を備え、コックピットをパーソナルでつながるものにします。直感的なインフォテインメント、シームレスなナビゲーション、スマート音声アシスタントなど、多彩な機能を実現します。
AUTOSAR:自動車安全の基盤
AUTOSARは、自動車の安全性と効率性の他にないスタンダードです。標準化、モジュール性、拡張性の原則に基づき、リアルタイム性が求められる機能(Classic AUTOSAR)や、ADAS・自動運転などの複雑なシステム(Adaptive AUTOSAR)開発に最適です。
AUTOSARのメリット
- 堅牢な設計標準によりソフトウェア品質が向上
- モジュール化による開発期間の短縮
- 車両が最高の機能要件を満たすよう高い安全性を確保
AUTOSARによって、車載ソフトウェアの複雑性が増しても、車両操作のコアの部分の信頼性を維持することができます。
Android Automotive OS:車内エクスペリエンスの革新
Android Automotive OSは単なるエンターテインメントではなく、ドライバーや同乗者のクルマへの期待そのものを大きく変えます。Android Autoがスマートフォンと車両をつなぐ仕組みに対し、Android Automotive OSは車両そのものに組み込まれています。
強みは豊富なUI、アプリエコシステム、接続オプションにあり、次世代デジタルコックピットに最適です。個別にカスタマイズされた音楽プレイリスト、シームレスなナビゲーション、アプリ統合など、ダイナミックで魅力的な車内エクスペリエンスを提供します。さらに、OTAアップデート機能により、AndroidはSDVでの体験を進化させる原動力となります。
AUTOSARとAndroid Automotive OSの融合
ここで自動車業界の転換点です。AUTOSARの安全性が求められるフレームワークとAndroidのユーザーフレンドリーなプラットフォームを組み合わせることで、SDV開発における突破口となり、車両は安全性と優れたユーザーエクスペリエンスを両立することができます。
統合の重要なポイント
- 責務の分離:AUTOSARはブレーキなど車両に不可欠な機能を担当、AndroidはインフォテインメントやUIを担当
- 通信と相互運用性:SOME/IPなどの標準化通信インターフェースにより、AUTOSAR ECUとAndroidシステム間でスムーズなデータ交換を実現
- 仮想化:ハイパーバイザーにより、AUTOSARとAndroidをひとつのハードウェア上で実行しつつも、それぞれを分離することで安全性と柔軟性を確保
- サービス指向アーキテクチャ:2つの技術をサービスベースのエコシステムに統合することで、車両システムとアプリ間の動的連携を実現
実際の活用例:革新の現場
AUTOSARとAndroidの統合はすでに成果を上げています。
- ADAS統合ナビゲーション:Androidがリアルタイムの地図とルート案内を提供し、AUTOSARがセンサーデータを処理して車線維持やアダプティブクルーズコントロールを実現
- 音声アシスト操作:Androidが音声認識を担当し、AUTOSARシステムと連携して空調やウィンドウ操作を制御
これらの例は、AUTOSARとAndroidの統合が機能性とユーザーエクスペリエンスの両方を向上させることを示しています。
SDV、次世代デジタルコックピット、IVIへの道を切り拓く
AUTOSARとAndroidの組み合わせは、自動車技術の未来を形作る上で重要です。自動車業界にもたらす主なトレンドには次のようなものがあります。
- SDV:モジュール式で適応可能なソフトウェアシステムにより、車両はライフサイクルを通じて最新機能を受け取り続けられる
- 次世代デジタルコックピット:Androidがインフォテインメントを、AUTOSARが重要システムを管理し、シームレスで安全かつ個別化されたドライビングエクスペリエンスを提供
- 車載インフォテインメント(IVI):AUTOSARが重要な車両操作が影響を受けないよう保証しつつ、Androidの豊富な機能がIVIを変革
課題と今後の展望
AUTOSARとAndroidの融合は有望な一方、課題もあります。2つの大規模なソフトウェアエコシステムを統合するには、セキュリティ、複雑なSoC上でのリアルタイム性、安全認証取得などの課題を克服しなければなりません。また、従来の統合方法では柔軟性やスピードに限界がありました。
EB corbos Linkは、こうした課題を克服するためのソリューションです。将来を見据えたAUTOSARベースのシステムとAndroid Automotive OSを統合し、ハードウェアやソフトウェアの変更、さらには機能アップデートやサポート延長など、進化し続けるユーザーニーズに合わせて柔軟に再構成できる動的統合を可能にします。

AUTOSARとAndroidによる自動車ソフトウェアの未来
AUTOSARとAndroidの融合は単なる技術的なマイルストーンではなく、車両の設計、開発、ユーザーエクスペリエンスの新たな視点を提示します。AUTOSARの安全性重視のフレームワークとAndroidのユーザー中心の機能を組み合わせることで、SDV、デジタルコックピット、IVIのさらなる革新を推進しています。
自動車業界がソフトウェア定義の未来に向かって加速する中、この統合はより安全で、スマートで、つながるクルマの実現を支えます。
エレクトロビットのパッケージソリューションEB corbos Linkは、SDV開発の最前線を牽引しています。